若手建築家が暴く「トントン壁」の真実:韓国住宅を包む石膏ボードへの反乱

空洞が奏でるトントンのリズム
壁を軽くノックするとトントンと鳴る――韓国の集合住宅で暮らしたことがある人なら、誰もが一度は耳にしたはずの音だ。建具、幅木、クローゼットの背面まで同じリズムを返すのは、石膏ボードという薄い覆いが家じゅうを包んでいるからだ。中央日報6月12日配信の特集では、最近竣工したソウルの高級オフィステルですら同じく空洞音が確認されたと報じられた。延世大建築学科のキム教授は『高層化と工期短縮が最優先されるなか、石膏ボードは施工コストの魔法の杖になった』とコメント。6月11日の聯合ニュース、10日の韓経、9日のハンギョレなど主要6紙も相次いで同趣旨の記事を掲載し、問題意識が急速に拡散している。とはいえ、手のひらに伝わる軽さ、ぶつけた瞬間に粉を吹く脆さ、そのたびに『ここは本物の家なのか?』という問いが浮かぶ。建築家ハン・スンジェはエル・コリア6月13日号のコラムで『石膏ボードは家の仮面にすぎない』と断言し、論争の火種となった。
家具が残した三角形の傷と修繕ビジネス

本棚が角で壁をこすっただけで三角形の白い傷がくっきり残る――そんな経験はあるだろうか。6月8日付の毎日経済は引っ越しシーズンに石膏ボード補修依頼が急増するとレポートし、家具の当たり傷一か所につき平均修繕費は6万ウォンでコンクリート壁の3倍に達すると伝えた。Naverブログ『집순이의 인테리어 일기』(6月10日)では書棚を動かして開いた穴を紙粘土で埋める奮闘記が1万ビューを突破。Tistory『건축하는남자』(6月9日)は『賃貸で壁を守る10の裏技』を公開し、SNSで6000シェアされた。しかしコメント欄には『応急処置より素材を変えるべき』という声が溢れ、DIY指南の枠を超えて社会問題化。石膏粉が床に積もる光景は、初夏の風物詩になりつつある。
韓国オンラインコミュニティが燃え上がる
ネットコミュニティの温度はさらに熱い。TheQooでは関連スレッドが24時間で2万クリックを記録し、トップコメントは『トンと叩くたびに貯金まで空洞になる音がする』という皮肉。Instizでは『石膏ボードは断熱とメンテに優れる、悪者扱いは短絡』と擁護派も登場。NatePannでは『管理会社に頼めば無料補修』という実体験が共有され、ディシインサイドの建築ギャラリーでは『DIY撤去ライブ配信』が人気タグ入り。エ펨코리아のサッカーファンは『スタジアムの応援より壁の音が響く』と冗談を飛ばし、PGR21のゲーマー達は『壁ドンで隣にラグが走る』と嘆く。賛否が交錯しつつ、議論は『生活のリアリティを奪う素材か、合理的テクノロジーか』へと深化している。
DIY解体ムーブメントと新しい道具箱
Tistory『철거일기』(6月7日)の管理人は、休日ごとに壁を剥がして鉄骨と配線を露出させる過程を公開し、YouTube動画が再生50万回を突破。聯合ニュース6月6日の追跡記事によると、4〜6月だけで『壁撤去専門』を掲げる小規模工事業者がソウルで15社誕生した。ネイバーカフェ『리모델링 같이해요』では粉塵対策や廃棄物ルールを共有するスレッドが日々更新。ハン・スンジェはSBSラジオで『壁を壊す行為は怒りではなく好奇心の表れ』と語り、1200件のメッセージが寄せられた。粉塵マスク、スクレーパー、工業用掃除機…ホームセンターの売れ筋にも変化が見え、DIY解体はブームを越え、居住哲学を伴うカルチャーへ育ちつつある。
アパート国家の歴史と価値観の揺れ
韓国が世界屈指の『アパート国家』となった背景には、70年代の新都市開発とプレハブ工法の大量導入がある。朝鮮日報6月5日の分析は、当時のスピード重視が素材選択に影響を残したと指摘。石膏ボードは軽量で配線変更に便利なため、リノベ需要が高い韓国市場と相性が良かった。しかし人口減少、Z世代の価値観変化、住宅価格高騰が重なり、『仮設感』そのものがストレス要因に。ネイバー『제로공간연구소』(6月4日)は『小さくても重厚な家』を特集し、Tistory『느린집』(6月3日)は地方のレンガ住宅を紹介。素材の重みと時間を感じる家に共感が集まり、速さから厚みへの価値シフトが見え始めている。
これからの『重い壁』と文化運動の行方
マネートゥデイ6月2日によると、コンクリートむき出しの『ハーフネイキッド』物件は標準より8%高いにもかかわらず即完売。スタートアップ『리얼하우스』は断熱パネルと左官仕上げを組み合わせた脱石膏ボード工法で50億ウォンを調達した。ネイバー『집밥건축가』(6月1日)は木材と漆喰で作るセルフビルド小屋を公開し、海外ファンもコメント。コミュニティでは『壁が重くなるほど心が落ち着く』『手触りが伝統をつなぐ』との声が目立ち、日本やドイツの石造住宅を引き合いに出す議論も増加。石膏ボード批判は素材論争を超え、住まいとアイデンティティを問い直す文化運動へと広がっている。次に引っ越すとき、あなたは壁をノックして確かめるだろうか、それとも…。
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