北への電波が突然消えた理由

半世紀の電波を断つ決断
10月初め、韓国国家情報院が50年以上続いた対北ラジオとテレビ放送をすべて停止したと伝えられた。6月25日に就任した新院長の判断で政権にかかわらず続いた大北放送が途切れた。政府は6月にも軍の拡声器放送を停止し南北関係の改善を優先する姿勢を示した。多くのメディアが平和のシグナルと報じる一方で、情報窓口が消えた北朝鮮住民の声が注目を集めている
80パーセント超の送信時間減少

米スティムソンセンターの38North報告によれば、日々の対北放送時間は415時間から89時間へ大幅に減少し周波数数も25から6へ激減した。主要な民間放送はKBS民族放送と国防省の自由の声に集約され、民間NPOラジオはかろうじて存続している。Naverブログには緊張緩和を歓迎する投稿が多数ある一方、Tistoryでは情報窓口を閉ざす危険性を指摘する声が上がっている
境界を越える密かな耳
北朝鮮国内ではテレビや新聞が政府広報一色でインターネットは遮断されている。そのなかで数百円のポータブルラジオを使い周波数をこっそり切り替えて外部情報に触れることが唯一の手段となっている。脱北者の証言を引用したブログには、真夜中に灯りの下で受信を試みた緊張感や感動が生々しく綴られている。複数の調査によれば約10パーセントの住民が一度は外国放送を聴いた経験があるとされ、人々の好奇心が伝わってくる
平和の使者か孤立の演出か
南北対立の一幕を終えたと歓迎する声もあるが、同時に北朝鮮住民の人権と情報自由が置き去りにされるとの懸念も根強い。Naverのコメント欄では放送停止が友好の兆しと受け止められる一方、Tistoryの読者投稿では最後の情報ルートを奪う行為だと批判が続く。さらにVOA韓国語サービスが3月以降更新停止している現状から、民間放送までも消え去れば北朝鮮を取り巻く暗闇は一層深まるのではないかと問いかける声が後を絶たない