ホワイトハウス「欧州ができるならアジアも」防衛費GDP5%要求がアジア太平洋に拡大

NATO史上最大の防衛費増額合意が示す新時代の到来
2025年6月24日から25日にかけてオランダのハーグで開催されたNATO首脳会議は、同盟の歴史において最も重要な転換点となった。32カ国の加盟国は、2035年までに防衛費をGDP比5%に引き上げるという画期的な合意に達したのである。この決定は、ドナルド・トランプ米大統領が数カ月にわたって加盟国に圧力をかけ続けた結果であり、欧州諸国がアメリカの防衛に過度に依存している現状を「不公平」と批判してきた成果でもある。
合意内容は具体的で、GDP比3.5%を核心的な防衛能力(軍事装備、兵力、弾薬など)に、残りの1.5%をサイバーセキュリティやインフラ整備、防衛産業基盤強化などの関連投資に充てるというものだ。これまでのGDP比2%目標から大幅な引き上げとなり、2014年にロシアがクリミアを併合した際に設定された従来目標を大きく上回る水準である。
トランプ大統領は今回の合意を「ヨーロッパと大西洋にとって明らかに大きな勝利」と称賛し、サミット自体も「大成功」と評価した。2019年以来となるNATOサミットへの出席で、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策が具体的な成果を上げた形となった。
ホワイトハウスがアジア太平洋同盟国への圧力を公式化

NATO合意からわずか1日後の6月26日、キャロライン・レビット・ホワイトハウス報道官は定例記者会見で、アジア太平洋地域の同盟国に対する明確なメッセージを発した。「ヨーロッパやNATOの同盟国ができるなら、アジア太平洋地域の同盟国・友好国も同様にできるはずだ」という発言は、日本や韓国をはじめとするアジアの同盟国に対して、NATO並みの防衛費増額を求める米政府の方針を明確に示したものである。
レビット報道官はさらに、「これはNATOの歴史において最も重要な団結と防衛の強化策となるだろう」と強調し、今回の決定によってアメリカの負担が軽減され、NATO同盟国がこれまで以上に強固になると述べた。ただし、アジア太平洋地域の同盟国に対する具体的な防衛支出の要求については、「その詳細については大統領が語ることになる」として、具体的な交渉はトランプ大統領自身が行うことを示唆した。
この発言は、米政府がグローバルな負担分担政策を一貫して推進していることを明確に示している。欧州での成功を受けて、次のターゲットがアジア太平洋地域であることを公式に認めた形となった。
国防総省が日本を含むアジア同盟国への5%要求を正式表明
米国防総省は6月19日、ショーン・パーネル報道官名義の声明を通じて、韓国を含むアジアの同盟諸国はGDP比5%水準で防衛費を支出すべきだと正式に表明した。パーネル報道官は「ピート・ヘグセス国防長官が上院聴聞会やシャングリラ会合で表明したように、欧州の同盟諸国がわれらの同盟、とりわけアジアの同盟のためのグローバルな基準を設定している」と述べ、「それはGDPの5%を国防分野に支出すること」だと明言した。
さらに6月21日、パーネル報道官はNHKの取材に応じ、日本を含むアジアの同盟国について「ヨーロッパの同盟国と同じ水準を満たすべきだ」との認識を示した。その背景として、「中国が大規模な軍事力を増強していることや、北朝鮮が核およびミサイル開発を継続していることを考慮すると、アジアの同盟国もヨーロッパと同じペースで迅速に行動するのが常識だ」と説明している。
パーネル報道官はまた、「アジア太平洋地域の同盟国に安全保障上の利益をもたらし、より効果的で公平な負担の分配がアメリカ国民にとっても利益となる」と明言し、アメリカの戦略的利益と同盟国の責任分担を明確に関連付けた。
韓国が直面する前例のない防衛費増額圧力
韓国にとって、GDP比5%という新基準の影響は特に深刻である。韓国は現在、約66兆ウォン(GDP比約2.8%)を防衛費として支出しているが、新基準に従えば防衛費を100兆ウォン以上に増やさなければならない計算となる。これは韓国の現代史において最も大規模な平時軍事費増額を意味する。
韓国外交部当局者は6月26日、米国の国防費増額要求に関する政府対策について取材陣に問われた際、「韓米同盟が変化する経済・安全保障環境に適切に対応できる『包括的未来型戦略同盟』に発展できるよう、米国側と緊密に協力する」と述べるにとどまった。国防費増額に関して韓米間で具体的協議が進行中かについては「同盟の強化に向けて随時各レベルで意思疎通を行っている」としながらも、具体的な内容については口を閉ざした。
専門家たちは、韓国がすでに米国の同盟国の中で最も高い水準であるGDP比約2.3%を国防費として支出していることを指摘している。世宗研究所のキム・ジョンソプ首席研究委員は「欧州は自主的に国防力強化の必要性を痛感している状況でこのような発表をしたが、我々は違う。米国が要求する数字に合わせるよりは『北朝鮮の通常兵器による脅威への対応には韓国が主導的責任を負う』という意志を明確にし、それに必要な国防力を増加させるという原則を持たなければならない」と指摘した。
日本への圧力強化と防衛費3%要求の現実化
日本に対する圧力も着実に強化されている。米紙フィナンシャル・タイムズは6月27日、トランプ政権が日本に対して防衛費をGDP比で3%に引き上げるよう求めたと報じた。これは現在の日本の防衛費水準(GDP比約1%)から大幅な増額を意味し、最終的には5%目標への段階的なステップと見られる。
米国防総省のパーネル報道官は、日本を含むアジアの同盟国について「欧州の基準に追いつくために迅速に行動することは常識的なことだ」と発言している。この発言は、日本が現在進めている防衛力強化の取り組みでは不十分であり、より大胆な増額が必要だという米側の認識を示している。
日本の場合、憲法上の制約や国民世論を考慮すると、急激な防衛費増額は政治的に困難な課題となる。しかし、中国の軍事力強化と北朝鮮の核・ミサイル開発の進展という安全保障環境の変化を背景に、米国からの圧力は今後さらに強まることが予想される。日本政府は、国内の政治的合意形成と米国の要求との間でバランスを取る困難な舵取りを迫られている。
中国の軍拡と北朝鮮脅威が生む戦略的圧力
米国がアジア太平洋地域の同盟国に防衛費増額を求める背景には、中国の急速な軍事力強化と北朝鮮の核・ミサイル開発の進展がある。中国は2025年の防衛費を前年比7.2%増の約1兆7800億元(約245億ドル)に設定し、継続的な軍事力増強を進めている。この中国の軍事力強化は、南シナ海や台湾海峡での緊張を高め、地域全体の安全保障環境を複雑化させている。
北朝鮮も核・ミサイル開発を継続しており、特に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術向上は、米国本土への直接的脅威となっている。これらの脅威に対応するため、米国は同盟国との負担分担を通じて、より効果的な抑止力の構築を目指している。
米国防総省は、アジア太平洋地域の脅威環境が欧州よりもさらに複雑で困難であると評価している。中国の軍事近代化、北朝鮮の核プログラム、南シナ海と台湾海峡での緊張の組み合わせは、実質的な防衛能力を必要とする複雑な安全保障情勢を作り出している。このような状況下で、同盟国の防衛費増額は単なる負担分担を超えて、地域の安定維持に不可欠な要素として位置づけられている。
同盟関係の未来と負担分担の新パラダイム
NATO合意とそれに続くアジア同盟国への圧力は、米国が同盟関係をどのように捉えているかの根本的な変化を示している。従来の「アメリカが安全保障を提供し、同盟国が戦略的位置づけと政治的支持を提供する」というモデルから、「すべての同盟国がより実質的な財政負担を分担する」モデルへの転換が進んでいる。
このアプローチは、アメリカの世界的リーダーシップのコストと利益に関する戦略的思考の広範な変化を反映している。国内で連邦支出削減と内政課題への対処を求める圧力が高まる中、政権は持続可能なグローバル・コミットメントを維持するために、同盟国の負担分担増加を不可欠と見ている。
しかし、この戦略の成功は最終的に、同盟国が支出増加を自国の安全保障に必要なものと見るか、それとも不合理なアメリカの要求と見るかにかかっている。NATOの経験は、明確な安全保障脅威とアメリカのコミットメント削減の可能性に直面した時、同盟国は同盟関係を維持するために重要な財政的犠牲を払う意思があることを示唆している。この動態がアジア太平洋地域でも成立するかどうかは今後の課題だが、地域安定にとっての賭けはこれ以上ないほど高い。