李在明氏が韓国第21代大統領に当選:工場労働者から大統領へ、歴史的勝利の背景と今後の課題

Jun 5, 2025
政治
李在明氏が韓国第21代大統領に当選:工場労働者から大統領へ、歴史的勝利の背景と今後の課題

歴史的勝利:工場労働者から大統領への道のり

2025年6月3日に実施された韓国第21代大統領選挙で、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前代表(61歳)が当選を果たした。李氏は1,728万7,513票(得票率49.42%)を獲得し、保守系「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)氏の1,439万5,639票(41.15%)を大きく上回った。投票率は79.4%と、1997年の大統領選挙以降最高を記録し、国民の政治への高い関心を示した。

李在明氏の人生は韓国の「アメリカンドリーム」を体現している。貧しい家庭に生まれ、幼少期から工場で働きながら独学で法律を学び、弁護士となった後、政治家として頭角を現した。城南市長、京畿道知事を歴任し、青年基本所得などの革新的な社会政策を実施してきた実績がある。今回の当選により、韓国史上初めて工場労働者出身の大統領が誕生することとなった。

戒厳令危機から生まれた選挙:政治的混乱の終息

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今回の大統領選挙は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が2024年12月3日に非常戒厳を宣布し、その後弾劾・罷免されたことに伴う補欠選挙として実施された。1987年の民主化以降初めての戒厳令宣布という前代未聞の事態の中で行われた選挙であり、史上2回目の早期大統領選挙でもあった。

特に印象的だったのは、戒厳令宣布当夜の李在明氏の行動である。国会が軍に包囲される中、李氏は自らの国会への駆けつけをライブ配信し、61歳にして塀を乗り越える姿が世界中に配信された。この「塀を乗り越えた男」としてのイメージは、民主主義を守る象徴として国際的にも注目を集め、李氏の政治的地位を大きく押し上げた。

オンラインコミュニティの反応と世論の変化

韓国のオンラインコミュニティでは、李在明氏の当選に対して複雑な反応が見られた。TheQooやNate Pannなどのプラットフォームでは、政治的安定への期待と経済回復への希望を表明するコメントが多数見られた。特に若い世代のユーザーは、李氏の労働者出身という背景と、住宅問題や雇用不安への具体的な政策提案を評価する声が目立った。

一方、DC InsideやInstizでは、李氏が抱える法的問題(大庄洞開発事業関連の疑惑など)への懸念を示すコメントも散見された。しかし、全体的には尹錫悦政権への批判的な評価が李氏への支持につながったという分析が多く、「保守政党への拒否票」としての側面が強調された。コミュニティユーザーたちは、李氏の実用主義的なアプローチと地方行政での実績を評価し、国政レベルでの成果に期待を寄せている。

国際メディアの注目と地政学的影響

李在明氏の当選は国際メディアからも大きな注目を集めた。BBCやロイターなどの主要国際通信社は、韓国民主主義の回復力と高い投票率を評価し、平和的な政権移行を称賛した。特に注目されたのは、李氏の労働者出身という背景で、「工場労働者から大統領へ」という物語は国際的に韓国の社会流動性と民主主義の象徴として報道された。

地政学的な観点では、李氏の当選が東アジアの安全保障環境に与える影響が分析されている。李氏は選挙期間中、「国益中心の実用外交」を掲げ、米韓同盟を基軸としながらも北朝鮮との対話再開に意欲を示した。北朝鮮も異例的に李氏の当選を短く報道し、対話の可能性を示唆している。中国メディアも李氏の当選を好意的に報道しており、経済協力の拡大への期待を表明している。

文化的背景と外国人読者への解説

李在明氏の当選を理解するためには、韓国社会の文化的背景を把握することが重要である。韓国では「개천에서 용 나다」(小川から龍が生まれる)という諺があり、貧しい環境から努力によって成功を収めることが高く評価される。李氏の人生はまさにこの価値観を体現しており、多くの韓国人の共感を呼んだ。特に経済的困難に直面している若い世代にとって、李氏の成功は希望の象徴となっている。

また、韓国の政治文化における「실용주의」(実用主義)の重要性も理解すべき点である。李氏は京畿道知事時代に青年基本所得、コロナ災害基本所得などの革新的な政策を実施し、実際の成果を上げたことが評価された。これは理念よりも実績を重視する韓国有権者の傾向を反映している。さらに、地域主義を超えた支持基盤の構築も注目すべき点で、従来の嶺南・湖南の地域対立を超えて、世代や階層を基軸とした新しい政治連合の形成を示している。

経済政策と「K-イニシアティブ」構想

李在明新大統領は「K-イニシアティブ」という包括的な国家発展構想を提示している。この構想は、AI・半導体などの先端産業育成を通じて韓国を世界をリードする国家に発展させることを目指している。経済面では成長重視を掲げつつ、中道・中間層の支持を固める戦略を推進し、選挙後には農家支援、社会保障給付の拡大、労働時間短縮(週4.5日・週4日制)への移行支援など福祉政策を強化し、成長と分配の両立を図る方針である。

李大統領は就任式で「非常経済対応タスクフォース」の即時稼働を表明し、現在の韓国が「国民生活、経済、外交、安全保障、民主主義といったすべての領域で絡まった糸のように重なった複合的危機に直面」しているとの認識を示した。韓国銀行の予測では2025年の経済成長率は0.8%まで落ち込む見通しで、新政権の経済政策の成否が注目されている。

今後の課題と日韓関係への影響

李在明新大統領は就任演説で「国民統合」を最重要課題として掲げ、「皆の大統領」になることを誓った。しかし、野党が多数を占める国会との協力、司法改革、経済再生など多くの困難な課題が待ち受けている。特に、世界最低水準の出生率、急速な高齢化、住宅価格高騰など構造的問題への対応が急務となっている。

日韓関係については、李氏が「対日強硬派」として知られることから、前政権下で改善した両国関係の行方が注目されている。しかし、李氏は安全保障や文化交流などの分野での日本との連携を強調しており、実用主義的なアプローチを取る可能性が高い。李氏は過去に「日本国民を愛している」と発言し、「相互依存的関係」の重要性を強調したこともあり、建設的な関係構築への期待も存在する。新政権の外交政策は「国益中心の実用外交」を基調とし、米韓同盟を維持しながら地域の平和と繁栄に貢献することを目指している。

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