李大統領、女性家族部に「青年男性差別研究せよ」指示：韓国社会の新たな転換点か

韓国史上初の男性差別研究指示：政治的計算か真の社会配慮か

皆さんはご存知でしたか？韓国史上初めて、大統領が公式に青年男性の差別問題を研究するよう指示したのです。李在明大統領は7月16日に公開された6月10日の国務会議議事録で、いわゆる「イデナム」（20代男性）が直面する差別問題について女性家族部に研究と対策案作成を指示していたことが明らかになりました。李大統領は申英淑女性家族部次官に対し、「男性が差別を受けていると感じる領域があるのに、公式的な議論がどこでも行われていない」と述べ、「性平等家族部に拡大改編するとしたので、女性政策を主に行うが、特定部分での男性差別を研究し対策を作る方案を検討してほしい」と指示しました。

この指示は韓国社会に大きな波紋を呼んでいます。これまで韓国政府は主に女性に対する差別問題に焦点を当ててきましたが、今回初めて男性差別についても公式的に検討するという画期的な発言となりました。一方で、この決定が2030世代男性層の支持率向上を狙った政治的戦略ではないかという分析も出ています。李大統領は会議で「全体構造的に見れば女性が差別を受けている冤罪な集団であることは明らかだ」と前置きしながらも、若い男性の競争脱落問題に言及し、女性家族部に担当部署があるかを尋ねました。

軍隊服務と青年男性の現実：「失われた時間」への配慮

この問題の核心には韓国の義務軍隊服務制度があります。申英淑次官は「担当部署はないが、深刻な問題として認識し『ジェンダー葛藤』に対する分析は行った」と答え、「（男性）青年たちは軍隊に行かなければならない喪失の時期があり、自分の被害が解決されないことに敏感になっている」と分析しました。18～21ヶ月間の軍隊服務は、韓国男性にとって避けられない義務ですが、同時に就職や学業において女性より不利な立場に置かれる要因でもあります。

特に最近の就職市場では、女性の成績が男性を上回る傾向が顕著になっています。李大統領は「10～30代前半だけを見ても、試験や公務員試験で女性が先んじており、社会の機会総量が不足しているため、そのような事（青年男性の逆差別）も激化している」と指摘しました。この現象は韓国社会で「ジェンダー葛藤」として表面化しており、特に20代男性の間で政治的立場の保守化が進んでいる背景にもなっています。軍隊服務による時間的損失と就職市場での競争激化が重なり、青年男性の不満が高まっているのが現状です。

自殺率と精神健康：見過ごされてきた男性青年の危機

李大統領は趙圭弘保健福祉部長官に対しても、男性青年が体験する逆差別・疎外感が自殺に与える影響について報告するよう指示しました。これは韓国の深刻な青年自殺問題と密接に関連しています。韓国の20～30代男性の自殺率は女性と比べて一貫して高い水準を維持しており、社会問題として浮上しています。

李大統領は会議で「最近青年の就職も困難で経済状況も悪化し、多くの影響を与えただろうし、青年の中でも男性青年が女性青年との競争で多く押し出されているため、差別を受けているという被害意識が大きいと思う」と述べました。この発言は、経済的困難と性別間競争が複合的に作用して男性青年の精神健康に悪影響を与えているという認識を示しています。従来、韓国社会では女性の自殺率増加に注目が集まっていましたが、今回の指示により男性青年の精神健康問題も政府レベルで検討されることになりました。

オンラインコミュニティの反応：賛否両論の激しい対立

この大統領指示に対するオンラインコミュニティの反応は極めに分かれています。男性中心のコミュニティでは「やっと男性の声が聞かれた」という歓迎の声が多く聞かれています。DCインサイド、イルベなどの掲示板では、「軍隊に行って時間を失い、就職でも不利な立場に置かれる現実をついに政府が認めた」という反応が多数見られます。一方、女性コミュニティでは「女性の権利向上がまだ不十分な状況で、男性差別を論じるのは時期尚早」という批判的な意見が優勢です。

ネイバーやダウム等の主要ポータルサイトのニュースコメント欄でも激しい議論が展開されています。「女性優遇政策により男性が逆差別を受けている」という主張と「構造的差別を受けている女性の問題がより深刻」という反論が対立している状況です。特に20代男性の間では、この大統領指示を政治的支持の根拠として評価する声が多く、「イデナム」現象の政治的影響力を改めて示しています。ティストリーブログなどでは、軍隊服務体験談や就職差別事例を共有する投稿が増加し、男性青年の実体験が注目を集めています。

ベトナム混血児ビザ特例検討：歴史的責任の新たな認識

大統領は男性差別問題と同時に、ベトナム戦争関連の歴史的課題についても言及しました。李大統領は金錫佑法務部次官に対し、「ベトナムの（韓国人）混血2世たちが韓国に来たがっており、許可してあげようという社会的議論があった」として、「ビザ特例制度」を検討するよう指示しました。これは韓国がベトナム戦争に参戦した際、韓国軍兵士とベトナム女性の間に生まれた子どもたちに対する措置です。

李大統領は「米軍が韓国に駐留していた時も混血児が多く生まれ、アメリカに養子に出された」事例を挙げ、ベトナム混血児問題の類似性を指摘しました。この指示は韓国社会が過去の歴史的責任を認識し、人道的観点から解決策を模索しようとする姿勢を示しています。しかし、過去に「家庭破綻」などの理由で反対論があったことも大統領は言及しており、社会的合意の難しさも認識している状況です。この問題は単純な政策決定を超えて、韓国社会の歴史認識と人道主義的価値観が試される重要な課題となっています。

政界反応と今後の展望：ジェンダー政策の新たな方向性

李大統領の指示は韓国政界にも大きな反響を呼んでいます。与党内では「包括的性平等政策」の一環として評価する声が出ている一方、野党では「女性政策後退」への懸念を表明しています。特に女性家族部の「性平等家族部」への改編計画と連動して、政府の性平等政策全般の方向性が注目されています。

専門家たちは今回の指示を「選挙戦略」と「政策的必要性」の両面で分析しています。20代男性の政治的影響力が高まる中、政府がこの層の支持を得るための戦略的判断という見方もあります。一方で、実際に青年男性が直面している社会的困難を政府が認識し、解決策を模索する必要があるという政策的観点からの評価もあります。今後女性家族部がどのような具体的研究を行い、どのような政策を提示するかが注目されています。この問題は単純な政治的計算を超えて、韓国社会の性平等政策の根本的な方向性を決定する重要な転換点となる可能性があります。