インド「ブルドーザー正義」の実態:ムスリム活動家の家屋が次々と破壊される衝撃の現実

預言者ムハンマドへの侮辱発言が引き金となった宗教対立
皆さんは知っていましたか?たった一つのテレビでの発言が、インド全土を宗教対立の炎に包むことになったのです。2022年5月、インド人民党(BJP)の女性報道官ヌプール・シャルマが、テレビ討論番組で預言者ムハンマドについて侮辱的な発言を行いました。彼女の発言は、預言者の妻アイシャの結婚時の年齢に関する歴史的記述に言及したもので、これがアラブ諸国全体からの激しい抗議と、インド国内でのムスリムによる大規模デモを引き起こしました。
与党BJPは国際的な圧力を受けて報道官を解任し、公式謝罪を発表しましたが、時すでに遅しでした。インド各地でムスリムコミュニティが街頭に繰り出し、抗議活動は暴力的な衝突へと発展。ウッタル・プラデーシュ州、西ベンガル州、ジャールカンド州などで激しいデモが発生し、複数の死者も出る事態となりました。この事件は、インド社会に深く根ざす宗教的分裂を露呈させ、後の政府による報復措置の口実を提供することになったのです。
アラハバードからプラヤグラジへ:ムガル帝国の遺産を消去する動き

ヒンドゥー至上主義の象徴的な動きとして、2018年にウッタル・プラデーシュ州政府は、ムガル帝国時代に命名された歴史的都市「アラハバード」の名前を、サンスクリット語の「プラヤグラジ」に変更しました。この改名は、BJP政権下で進むヒンドゥー・ナショナリズムの一環として行われ、イスラム教徒の文化的遺産を公共空間から組織的に排除する政策の一部でした。
ヨギ・アディティヤナート州首相は、強硬なヒンドゥー教僧侶から政治家に転身した人物で、人口2億4千万人を抱える同州でアグレッシブなヒンドゥトヴァ(ヒンドゥー至上主義)政策を推進しています。彼の政権下では、改宗禁止法から「違法建築物」とされる建物の破壊まで、ムスリムコミュニティを標的とした政策が一貫して実施されてきました。プラヤグラジへの改名は、より攻撃的な措置の前触れとして機能し、政府がインドの世俗的アイデンティティをヒンドゥー・ラシュトラ(ヒンドゥー国家)へと再構築する決意を支持者と批判者の両方に示すものでした。
「ブルドーザー・ババ」の超法規的制裁システム
ヨギ・アディティヤナート州首相は、超法規的制裁の手段としてブルドーザーを積極的に使用することから「ブルドーザー・ババ」という異名で呼ばれるようになりました。この「ブルドーザー正義」は、特にムスリムを対象とした被告人の財産を破壊する新たな集団的処罰の形態として確立されました。預言者ムハンマドに関する発言への抗議活動の後、UP州政府は約40人の抗議指導者を特定し、「違法建築」を口実に彼らの家屋を組織的に破壊しました。
これらの破壊行為は無作為な行動ではなく、ムスリムコミュニティに対して異議申し立ての結果を示すために慎重に計画された作戦でした。アムネスティ・インターナショナルの調査によると、ムスリムが集中する地域が特に標的とされた一方で、近隣のヒンドゥー教徒所有の建物は手つかずのまま残されていました。この慣行は、一部のメディアが効果的な統治モデルとして賞賛するほどの悪名を得ましたが、明らかに法的手続きと人権を侵害するものでした。
ジャベド・モハマドとアフリーン・ファティマ一家の悲劇
インド福祉党の57歳の活動家ジャベド・モハマドのケースは、この弾圧の恣意的な性質を完璧に例証しています。警察は令状なしに彼の自宅を訪れ、妻のパルヴィーン・ファティマ(52歳)と娘のスマイヤと共に彼を拘束しました。娘のアフリーン・ファティマは後にアルジャジーラに対し、父親が適切な法的手続きなしに拘束され、当局が彼の居場所を明かすことを拒否したと語りました。
一家は祖父母の世代から20年以上にわたって固定資産税を支払っており、「違法建築」という主張が明らかに虚偽であることを証明していました。破壊通知は母親名義で登録された物件に父親の名前で夜間に貼り付けられ、翌朝には家屋が破壊されました。この性急なタイムラインは、行動の計画的性質と捏造された法的正当化を露呈しました。アフリーン・ファティマの証言は嫌がらせの組織的性質を明らかにし、警察が家族を拘束するために何度も戻ってきたことを示しました。糖尿病を患う母親は適切な医療なしに30時間以上拘束されました。
最高裁判所の介入と法的闘争
被害を受けた家族たちはこれらの不正義に対して沈黙を保っていません。ジャベド・モハマドの家族は地方裁判所に訴訟を起こし、違法な破壊に対して1億ルピー(約16億円)の損害賠償を求めています。彼らのケースは、様々なBJP統治州で実践されているブルドーザー政治に対する法的挑戦のより広いパターンの一部です。
インドの最高裁判所はこれらの破壊行為を繰り返し批判し、2024年11月の画期的な判決でプラヤグラジの破壊を「非人道的で違法」と呼びました。裁判所はプラヤグラジ開発公社に対し、影響を受けた各住宅所有者に100万ルピーの補償を支払うよう命じ、住居への権利と適正手続きの憲法上の権利の侵害を認めました。ウッジャル・ブーヤン判事は、ブルドーザーが家を破壊する中で本を持って逃げる小さな女の子を映したビデオが皆を衝撃させたと述べました。最高裁判所の介入は、これらの違反の組織的性質と説明責任の必要性を強調しましたが、政治的風土を考慮すると、そのような命令の実施は依然として困難です。
モディ政権下でのムスリムへの組織的差別の拡大
プラヤグラジの破壊は、モディ政権下でのインドのムスリム少数派に対するより広範な差別キャンペーンの一部です。類似のブルドーザー行動が複数のBJP統治州で記録されており、グジャラート州だけで7,000以上のムスリムの家屋が破壊されています。このパターンは破壊を超えて大量逮捕にまで及び、様々な事件の後に数千人のムスリムが拘束されています。
2025年のワクフ修正法は、政府がムスリムの宗教的財産を国家管理下に置こうとするこの組織的標的化をさらに例証しています。ワクフ法に対する抗議は2025年4月にインド全土で勃発し、ムンバイ、コルカタ、パトナ、その他の主要都市でデモが行われました。この法律は、批判者がムスリムコミュニティを周辺化し、その制度的自治を消去するBJPのキャンペーンと描写するものの別の戦線を表しています。国際人権団体はこの差別のパターンを記録しており、アムネスティ・インターナショナルは選挙前、選挙中、選挙後のムスリムの権利の即座の保護を求めています。
国際的監視とコミュニティの反応
インドでのムスリムの組織的標的化は国際的な注目と非難を集めています。アフリーン・ファティマのようなケースに対するアルジャジーラの報道は、インドのブルドーザー政治に世界的な監視をもたらし、これらの行動の恣意的性質を国際的な聴衆に暴露しました。破壊行為はムスリムコミュニティ内に恐怖の風土を作り出し、多くの家族が異議申し立てのあらゆる形態に対する政府の報復の可能性について絶え間ない不安の中で生活しています。
コミュニティリーダーは、心理的影響が直接の被害者をはるかに超えて広がり、ムスリムの政治参加と市民社会への関与に萎縮効果を生み出していると報告しています。家屋と事業の喪失は、影響を受けた家族に長期的な経済的困難を生み出し、多くがすべてを失った後に生活を再建するために苦闘しています。財政的・感情的コストにもかかわらず、被害者は法的救済を追求し続けていますが、正義の遅いペースと加害者の継続的な免責は制度的保護への信頼を侵食しています。ジャーナリストのCJ・ワーレマンは「親愛なるCNN、あなたのインドの関連会社は、ウッタル・プラデーシュ州でナチスにインスパイアされたヒンドゥー僧侶によるムスリムの家屋の違法破壊を祝うことで大量虐殺を助けている」とツイートしました。著名なムスリム活動家のハレド・ベイドゥンは「これは、BJPが彼らの信仰、コミュニティ、生活を包囲する中で、インドの2億2千万人のムスリムに対する静かにして何もしないという明確で響く メッセージである」と付け加えました。