韓国研究チーム、稀少型ポリープ検出可能なAI大腸内視鏡システム「ColonOOD」を開発

Jul 19, 2025
医療技術
韓国研究チーム、稀少型ポリープ検出可能なAI大腸内視鏡システム「ColonOOD」を開発

革命的なAI技術による大腸がん早期発見の新時代

大腸がんは韓国において発症率第2位、死亡率第3位を占める主要ながん種です。しかし、大腸内視鏡によってポリープを迅速かつ正確に診断できれば、大腸がんによる死亡率を最大53%削減できることが知られています。現在、大腸内視鏡検査には腺腫性ポリープ(高リスク)と過形成性ポリープ(低リスク)を迅速かつ正確に診断するためのコンピュータ支援システム(CAD)が導入されています。

しかし、既存システムの多くはポリープを2つの主要タイプにのみ分類できるため、発生頻度が稀であったり新しいタイプのポリープを検出することには限界がありました。このような背景の中、韓国の教授チームが稀少型ポリープまで検出できる新しい診断支援システムを開発し、医療界に大きな注目を集めています。

既存システムの限界と新技術の必要性

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従来の大腸内視鏡AI診断システムは、主に腺腫性ポリープと過形成性ポリープの二分類に特化していました。オリンパス社のEndoBRAIN-EYEやEIRL Colon Polypなどの既存システムは、感度96.0%、特異度98.0%という高い精度を示していますが、これらは学習済みの標準的なポリープタイプに限定されています。

日本国立がん研究センター東病院の研究でも、大腸ポリープ検出AIの生成には大量の高精度な画像データとアノテーションが必要であり、日常診療とは別に手動でのデータ抽出が課題となっていることが報告されています。このような限界から、学習していない稀少型ポリープの感知機能(OOD, Out-of-Distribution)を搭載し、医療従事者が信頼できる結果を提供する新しい診断支援ツールの必要性が高まっていました。

ColonOODシステムの革新的技術

ソウル大学病院放射線医学科のイ・ドンホン教授とソウル大学データサイエンス大学院のキム・ヒョンシン教授チームが開発した「ColonOOD」は、国内4つの医療機関および公開データセットに登録された約3,400件の大腸内視鏡データを基に学習・検証を実施しました。

このシステムの最大の特徴は、主要ポリープの分布を学習して稀少型ポリープの分布を検出する機能を持つことです。また、ポリープ分類時に既存モデルでは提供されなかった分類結果の信頼レベル(High、Low)を併せて提示することで、内視鏡専門医の正確な臨床意思決定を支援します。CNNシステムを用いた従来の大腸ポリープAI自動診断と比較して、ResNet技術を採用した新システムにより診断精度の向上を実現しています。

検証結果と臨床性能の評価

ColonOODの性能検証は、4つの医療機関(ソウル大学病院江南センター、ソウル峨山病院、セブランス病院、梨花女子大学ソウル病院)のデータと2つの公開データセットを基に行われました。その結果、全体ポリープを最大79.7%の精度で分類し、稀少型ポリープについては最大75.5%を正確に検出することが実証されました。

現在日本で導入されているAI支援システムとの比較では、従来のシステムが標準的なポリープ検出で高い精度を示す一方で、ColonOODは未学習の稀少型ポリープに対する対応力において優位性を示しています。大腸内視鏡検査におけるAI活用により、年間370億円の医療費削減効果が期待されているという研究報告もあり、ColonOODのような高精度システムの普及は医療経済的にも大きな意義を持ちます。

臨床現場への影響と日本での展開可能性

日本では既に複数の医療機関でAI支援大腸内視鏡システムが導入されており、仙台の医療機関ではEIRL Colon Polypが宮城県で初導入されるなど、AI技術の普及が進んでいます。名古屋の内視鏡クリニックでは、経験豊富な内視鏡専門医とAIによるダブルチェック機能により病変の見逃しを極限まで防ぐ取り組みが行われています。

2025年には複数のクリニックがgastroAI™ model-などの新しいAI画像解析システムを導入しており、日本の医療現場でもAI技術への関心が高まっています。ColonOODのような稀少型ポリープ検出機能を持つシステムは、日本の高齢化社会における大腸がんスクリーニングの質向上に大きく貢献する可能性があります。

将来展望と医療技術革新への期待

イ・ドンホン教授は「この研究は既存のAIベース大腸内視鏡診断支援システムに稀少型ポリープ検出モジュールを統合した初の研究」であると強調し、「ColonOODの予測結果を活用することで、臨床医が信頼レベルに応じて診断精度を大幅に向上させることができる」と期待を述べています。

実際の臨床環境を反映したColonOODは医療現場での活用度が高く、今後の前向き研究および多機関研究による検証が予定されています。この研究は人工知能分野の権威ある国際学術誌「Expert Systems with Applications」(IF 7.5)に掲載され、国際的な注目を集めています。

日本においても、富士フイルムなどの医療機器メーカーがAI内視鏡技術の更なる発展に向けた取り組みを続けており、ColonOODのような革新的システムの導入により、大腸がん予防と早期発見の新時代が到来することが期待されています。AI技術の進歩により、医師の診断精度向上と患者の予後改善が同時に実現される未来が、すぐそこまで来ているのです。

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