占いが原因で結婚届も出せないまま…13年間のDV被害者が家から追い出される衝撃事件

占いが引き起こした13年間の悲劇:韓国社会に隠された家庭内暴力の実態
皆さんは知っていましたか?韓国では占いや四柱推命(サジュパルジャ)の影響で正式な結婚ができず、法的保護の隙間で苦しむ家庭内暴力被害者が存在することを。2025年7月16日にYTNラジオ「チョ・インソプ弁護士の相談所」で紹介された事例は、現代韓国社会における伝統的信念と現代的価値観の衝突を浮き彫りにしています。
主婦のAさん(37歳)は、夫の祖母が占いを盲信し「相性が悪い」という理由で13年間結婚届を提出できませんでした。しかし、両家族との交流もあり、2人の子どもも産み育てながら事実上の家庭を築いてきました。問題は夫による継続的な家庭内暴力でした。Aさんは「子どものために」13年間耐え続けましたが、最近酒に酔った夫がAさんを蹴り、首を絞める様子を12歳の娘が目撃し警察に通報。その後、夫は『罰を受けても君とは一緒に住めない』と言い、Aさんを家から追い出したのです。
この事件は韓国における家庭内暴力の深刻な実態を表しています。警視庁の統計によると、2024年中のDV相談件数は9,254件で前年から162件増加しており、日本でも同様の問題が深刻化しています。韓国では配偶者からの暴力を経験した女性が27.5%、男性が22.0%という高い数値が報告されており、特に関係解消時には暴力率が50.8%まで跳ね上がることが明らかになっています。
12歳の少女が救った母親の命:子どもが見た家庭内暴力の現実

この事件で最も衝撃的だったのは、12歳の娘が勇気を出して警察に通報したことです。多くの大人の被害者でさえ通報をためらう中、幼い少女が母親を救うために行動を起こしました。これは韓国社会において家庭内暴力が「家庭内の私的な問題」として扱われがちな文化的背景があることを示しています。
実際、韓国の成人の50%が夫婦間の暴力に対して警察に通報しないと答えているデータもあります。このような文化的障壁が、被害者を孤立させ、暴力の継続を許してしまっているのです。警察庁は2025年4月23日に全国の警察担当者を集めた初の会議を開催し、ストーカーやDV被害が増加傾向にあることを受けて対策強化を指示しました。
事件後、夫はAさんを家から追い出しただけでなく、子どもたちに対しても『母親と連絡を取ったらお前たちも殴る』と脅迫し、母子の接触を断ちました。現在Aさんは2週間も行き場を失い彷徨っている状況で、「これまでの歳月を耐え忍んで家庭を守ってきたのに、家にいる子どもたちがとても心配だ。このまま全てを諦めなければならないのか」と助けを求めています。このように、家庭内暴力は被害者だけでなく、子どもたちにも深刻な心理的トラウマを与える社会問題なのです。
事実婚でも受けられる法的保護:韓国の家族法が提供する救済措置
多くの人が誤解していることですが、正式な結婚届を提出していなくても、事実婚関係にある場合は法的保護を受けることができます。法務法人新世界のリュ・ヒョンジュ弁護士は、「事実婚も法律婚に準じて様々な保護を受けることができる」と説明しています。特に事実婚解消時には、離婚時と同様に慰謝料および財産分割請求が可能です。
韓国の判例では、事実婚は当事者間に婚姻の意思が一致し、夫婦共同生活として認められる実態が存在する場合に認められます。期間の制限はなく、①公的に結婚様の関係として公表している場合、②正式な結婚式を挙げた場合、③夫婦として同居している場合の3つの状況で認められます。Aさんの場合、13年間の関係、2人の子ども、両家族からの認知により明らかに事実婚状態が成立しています。
ただし、重要な制限として、事実婚配偶者は死亡後の相続権は認められていません。しかし、相続人がいない場合は特別縁故者として財産分与を請求することは可能です。また、住宅賃貸借保護法上の賃借権継承や各種社会保障制度での配偶者としての地位は一定程度保護されています。このような法的枠組みにより、Aさんは13年間の婚姻生活と2人の子どもの養育という事実に基づいて、適切な財産分割と慰謝料を請求することができるのです。
家庭内暴力被害者保護命令:迅速な法的救済の仕組み
リュ弁護士が提案したもう一つの重要な選択肢が「家庭内暴力被害者保護命令」または「臨時保護命令」の申請です。これらの制度により、暴力的な夫を家から退去させ、Aさんが子どもたちと一緒に家に戻ることが可能になります。2024年4月1日から施行された改正配偶者暴力防止法により、保護命令制度はさらに強化されました。
保護命令には、①被害者や家族構成員への接近行為制限(6ヶ月以内)、②電気通信を利用した接触制限、③親権行使の制限(6ヶ月以内)、④社会奉仕・更生プログラム受講命令(100時間以内)、⑤保護観察(6ヶ月以内)、⑥保護施設への監護委託(6ヶ月以内)、⑦医療機関への治療委託(6ヶ月以内)、⑧相談所等への相談委託(6ヶ月以内)が含まれます。
さらに、退去等命令の期間は原則2ヶ月ですが、住居の所有者または賃借人が被害者のみである場合、6ヶ月まで延長可能な特例が新設されました。保護命令違反に対する罰則も「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」へと厳罰化されています。警察の権限も拡大され、DV通報を受けた警察官は現場で緊急一時措置を実施し、加害者の住居からの退去命令や100メートル以内接近禁止措置を即座に発令できるようになりました。
韓国社会における家庭内暴力の現実:統計が示す深刻な実態
韓国政府の調査によると、女性の35.8%が生涯のうちに少なくとも一度は暴力を経験しており、2021年から0.9ポイント増加しています。特に関係解消時の暴力率は深刻で、離婚・別居・同棲解消を経験した人の50.8%が家庭内暴力を報告しており、これは現在結婚している夫婦の14.3%の3倍以上の高い数値です。
しかし、韓国社会では依然として家庭内暴力を「私的な家庭問題」として捉える傾向が強く、成人の50%が夫婦間暴力の際に警察に通報しないと答えています。この文化的障壁は、専門家が指摘する「寛大な裁判所の判決」と相まって、家庭内暴力を軽視する社会的風土を作り出しています。2015年から2018年6月までに検挙された家庭内暴力犯16万4020人のうち、拘束されたのはわずか1632人に過ぎず、起訴率も8.5%という低い数値となっています。
政府は2025年予算で家庭内暴力被害者支援を強化し、シェルター施設を353箇所に増設しました。ストーカー被害者への緊急住居支援も全国展開され、複雑な暴力事案に対する専門カウンセリングも追加予算が配分されています。オンライン性的搾取検出のためのAIベースシステムや、ストーカー・デート暴力・性的暴行を包括的にカバーする統合支援チームが11の大都市圏に導入されるなど、総合的な対策が講じられています。
オンラインコミュニティの反応:社会変革への願いと現実の壁
この事件はネイバーやティストリーブログなどのオンラインコミュニティで大きな反響を呼んでいます。多くのユーザーが類似の経験を共有し、「占いや迷信のせいで法的保護を受けられない被害者がまだ存在することに衝撃を受けた」「12歳の娘が母親を救ったことが感動的だが、そこまで追い込まれる前に社会が介入すべきだった」といったコメントが寄せられています。
特に女性ユーザーからは「事実婚でも法的保護が受けられることを知らなかった」「もっと多くの人にこの情報が広まってほしい」という声が多く、情報格差の解消を求める意見が目立ちます。一方で、一部では「なぜ13年間も耐えたのか理解できない」「もっと早く助けを求めるべきだった」という批判的な意見もありますが、これに対しては「被害者を責めるのではなく、社会システムの改善に焦点を当てるべきだ」という反論も多く見られます。
法律専門家たちは、結婚登録状況に関係なく被害者は躊躇せずに助けを求めるべきだと強調しています。Aさんの事例で示されたように、事実婚関係でも相当な法的保護を受けることができ、全国の家庭内暴力専門相談センターは1366ホットラインシステムを通じて24時間体制で運営されています。現在の議論には、被害者の同意を必要とする家庭内暴力犯罪を親告罪から除外することや、デート暴力や別れ後のストーカー行為にも夫婦間暴力と同等の保護を提供することなどが含まれています。
被害者支援システムと今後の課題:包括的保護に向けた取り組み
韓国では家庭内暴力被害者のための多層的な支援システムが構築されています。全国1366ホットラインは24時間相談・危機介入サービスを提供し、各地区の家族相談センターでは被害者回復支援や加害者更生プログラムを含む専門的な家庭内暴力プログラムを運営しています。法制度も被害者保護のため継続的に改善されており、警察の緊急一時措置権限が拡大され、正式な裁判所命令処理期間中も即座に安全を確保できるようになりました。
2025年の家族法改革では育児休暇の延長、父親休暇の倍増、暴力被害家庭に対する職場保護の強化が実現しました。子どもの親権手続きでは年齢に関係なく子どもの意見聴取が義務化され、養育費滞納による親の拘束基準も3ヶ月から30日に短縮されています。経済的支援も拡充され、未成年性暴力被害者への自立支援金は1000万ウォンに増額され、月50万ウォンの手当が最大5年間支給されます。
家庭内暴力被害者への住居支援は全国353施設に拡大され、施設退所後も自立支援金が利用可能です。しかし、Aさんのケースが示すように、伝統的信念と現代的価値観の衝突により生じる法的盲点も存在します。占いや迷信による結婚届未提出、重婚的事実婚、外国人配偶者の特殊事情など、多様な家族形態に対応できる柔軟な法制度の構築が求められています。これらの包括的支援システムは、家庭内暴力が私的家庭問題ではなく社会全体で対応すべき深刻な犯罪であるという韓国社会の認識変化を反映しており、今後もより効果的な被害者保護に向けた制度改善が期待されています。