リバクスクール事件が韓国社会に投げかけた衝撃と教訓:極右イデオロギーと公教育の危機

リバクスクール事件とは何だったのか?
皆さんは、2025年6月に明るみに出た「リバクスクール事件」をご存知ですか?この事件は、極右歴史教育団体「リバクスクール」が韓国の公教育現場に組織的に介入し、放課後プログラム「ヌルボム学校」に自らが認定した講師を大量に送り込んだことから始まりました。全国57校で43人の講師が活動し、独裁者として知られる李承晩や朴正煕を称賛し、日本軍慰安婦問題を否定するなど、歴史歪曲や少数者差別を子どもたちに教えていたと報道されています。
コメント工作と世論操作の実態

リバクスクールは単なる教育団体ではありませんでした。2022年から「スマートフォン講座」などを装い、高齢者を中心にコメント工作チームを組織し、NAVERなどの大手ポータルサイトで世論操作を行っていたことが明らかになっています。特定のニュース記事に対し、組織的に「いいね」やコメントを集中させ、若い世代(20〜40代)への影響を狙っていたのです。警察もこのコメント工作疑惑を捜査対象とし、リバクスクールのヌルボム学校事業への関与も調査しています。
歴史教育の歪みと社会的対立
リバクスクールの授業を受けた生徒は「学校で習った歴史と全く違い、衝撃だった」と語っています。学校教育では李承晩は不正選挙を行った人物、朴正煕は独裁者と教えられているのに対し、リバクスクールでは経済成長こそが民主主義を実現するとし、独裁を正当化する内容が強調されていました。こうした一方的な歴史観の注入は、韓国社会の分断や対立をさらに深める結果となっています。
公教育と競争社会が生む極端化の土壌
今回の事件は、単にリバクスクールの組織的な活動だけに責任を押し付けることはできません。韓国の公教育が入試中心の競争社会となり、批判的思考や多元的な価値観を育む余地が少ないことが、極端な思想が入り込む温床となっているのです。日本学術会議も、歴史教育において多元的・対話的な理解の重要性を指摘しており、社会全体での取り組みが求められています。
保護者・コミュニティの反応と危機感
韓国の主要コミュニティ(TheQoo、Nate Pann、Instiz、DC Inside、FM Koreaなど)では、保護者や市民から「子どもを安心して預けられない」「教育現場の監督体制が甘すぎる」といった怒りや不安の声が相次いでいます。一部では「放課後プログラムの外部委託自体を見直すべき」との意見や、「歴史教育の透明性を高めるべき」といった建設的な提案も見られます。
韓国社会が直面する教育改革の課題
事件発覚後、教育部は全国のヌルボム学校の実態調査を開始し、関係者の処分や講師の入れ替えを進めています。しかし、根本的な問題解決には、放課後プログラムの外部委託基準の見直しや、講師認定プロセスの透明化、歴史教育の多元化が不可欠です。また、NAVERなどのプラットフォームもコメント操作対策を強化し始めており、社会全体での監視と議論が続いています。
ファンや海外の読者が知っておくべき文化的背景
韓国の教育現場は、学歴社会・競争社会の影響で「正解主義」が根強く、批判的思考や多様な価値観の教育が遅れがちです。そのため、特定のイデオロギーや宗教団体が教育現場に入り込むリスクが常に存在します。今回のリバクスクール事件は、教育が単なる知識伝達の場ではなく、社会の価値観や民主主義を守るための最前線であることを改めて示した出来事です。海外の皆さんも、韓国社会のこうした背景と課題を知ることで、より深く現地のニュースや議論を理解できるはずです。