韓国軍脱走兵が武器携帯で逃走も2時間で逮捕 - 韓国軍の脱走問題と制度変化を徹底分析

2時間で終結した韓国軍脱走事件の全貌
2025年7月18日午後7時47分、江原道江陵市の軍事基地で警備任務に就いていたA上等兵が軍用銃器と空砲を持って部隊を無断離脱する事件が発生した。この脱走事件は韓国社会に大きな衝撃を与えたが、迅速な対応により僅か2時間後の午後10時2分、忠清北道括山の高速道路料金所で忠北警察庁所属の高速道路巡察隊によって逮捕された。A上等兵は移動中に銃器と弾薬を近隣地域に遺棄しており、追跡していた軍部隊によってこれらの武器は全て回収されている。軍関係者は「銃器及び弾薬は全て回収され、現在まで確認された異常はない」として、正確な軍務離脱の背景と経緯を徹底調査すると発表した。この事件は韓国の徴兵制度における脱走問題の深刻さを改めて浮き彫りにしている。
韓国の脱走兵問題:法的枠組みと現実

韓国の軍刑法上、脱走(軍務離脱罪)の公訴時効は10年となっている(2007年12月21日以前の改正前は7年が適用)。しかし、各軍では3年毎に軍務離脱者に復帰命令を出すため、軍刑法上の命令違反罪が定期的に新たに適用される仕組みとなっている。命令違反罪の公訴時効は5年(改正前は3年)であり、兵役義務がなくなる満40歳を超えれば免役となるが、復帰命令を受けた以上、満45歳になる前までは事実上指名手配状態と変わらない。国民の力のユ・サンボム議員が公開したデータによると、2021年基準で5年以上脱走状態にある長期軍務離脱者は総9名で、このうち5名は10年以上軍に復帰していない状態だ。長期脱走兵の軍務離脱理由は未だ把握されていない場合が過半数を占め、原因不明(5名)が最も多く、残りも服務不適応(推定3名)、家庭環境(推定1名)となっている。最長期間の脱走兵は18年5ヶ月間行方が分からない状態が続いている。
D.P.(脱走兵追跡組)の廃止とその背景
2022年を最後に、軍務離脱者を追跡する「脱走兵体捕組(Deserter Pursuit・DP)」の兵士職責は廃止された。過去とは異なり脱走兵数が大幅に減少したことに加え、軍人員削減に伴う戦闘兵力中心の人員運営体系が導入されたためである。D.P.は憲兵隊の職責名称で、主に2人1組で活動し、「脱走兵逮捕組」とも呼ばれていた。軍関係者によると、国防部調査本部が策定した制度改善案により、兵士は捜査業務から外されることになった。従来の軍事法院法では、軍検事または憲兵が捜査を担当していたが、新制度では民間人調査官と軍事警察が役割を引き継ぐこととなった。この変化は、指揮官の法的手続きへの影響を最小化し、兵士を容疑者調査任務から排除することを目的としている。
Netflixドラマ「D.P.」が与えた社会的インパクト
D.P.はNetflixドラマの素材として活用され、多くの関心を集めた。このドラマは実際にD.P.として軍服務を行った作家による2014年から連載された人気ウェブトゥーン『D.P 犬の日』を原作としている。作品は軍隊内でのいじめをモチーフとし、その実態を抉り出すハードな社会派ドラマとして話題となった。2014年はまさに韓国軍の過酷行為が社会的話題となった時期で、「ユン一等兵死亡事件」と「イム兵長銃乱射事件」が発生した年でもあった。ドラマは脱走兵を逮捕するために追跡する憲兵隊D.P.のアン・ジュノとハン・ホヨルが体験するエピソードを通じて、各脱走兵の事情を紹介し、兵営の不条理と矛盾を告発する内容となっている。韓国では「21年最高のNetflixオリジナル作品」との評価も受け、軍隊問題への社会的関心を高める契機となった。
韓国軍における深刻な軍隊内暴力問題
韓国軍の脱走問題を理解するためには、軍隊内で発生する深刻な暴力やいじめ問題を無視することはできない。2021年6月には韓国海軍駆逐艦「姜邯賛」所属のチョン一等兵が先任兵からの集団いじめ・暴行・暴言を受けた末に極端な選択をする事件が発生した。チョン一等兵は休暇後に復帰すると「楽をしている」「神の子」などの暴言を受け、乗組員室に入ると他の兵士が一斉に出て行くという仲間外れにもされていた。甲板勤務中にミスをすると胸や頭を押して突き倒され、「死んでしまえ」などの暴言を浴びせられていたという。チョン一等兵は艦長にいじめを申告したが、艦長は被害者と加害者を即時分離させず、逆に「加害者から謝罪を受けるのはどうか」と両者を対面させていた。2005年から2010年のデータによると、自殺した韓国兵の数は年々増加しており、2005年64名から2010年82名まで増加している。
国際的視点から見る軍事脱走問題
韓国の軍事脱走問題は国際的な文脈でも注目されている。2023年7月には、米軍兵士トラヴィス・キング二等兵が韓国から軍事境界線を越えて北朝鮮に越境する事件が発生した。キング二等兵は韓国での暴行容疑で約2ヶ月間収容されており、釈放後に懲戒手続きのためにソウル近郊の仁川空港に護送されたが、飛行機には乗らずにDMZ見学ツアーに参加して越境した。北朝鮮メディアは、キング氏が米軍内での「非人間的な扱い」と人種差別を受けて逃亡したと報じていた。一方、脱北者の問題も深刻で、1990年代から違法に国境を越えて中国に逃れる者が急増している。中国政府は脱北者を難民とは認定せず不法入国者として扱い、摘発された脱北者は北朝鮮へ強制送還されており、強制送還された人々は死刑を含む厳しい処罰を課せられている。
韓国徴兵制度の現状と課題
韓国の徴兵制度は19歳になる年に徴兵検査を受け、28歳の誕生日を迎えるまでに入隊することが義務づけられている。現在は男性のみ19~35歳の間に18ヶ月~22ヶ月の兵役が義務化されており、良心的兵役拒否は部分的に認められている。2018年に憲法裁判所が違憲判決を下したことで、2020年より刑務所における代替役務制度が整備された。除隊後も兵役義務は続き、除隊から8年間は郷土予備軍(予備役)、40歳までは民防衛隊に所属しなければならない。この間、日常生活を送りつつも一定の日数にわたって軍事訓練又は教育を受ける必要があるため、韓国人男性が軍と関わらなければならない期間は長期に及ぶ。過去5年間で脱走兵は1日平均1.6人発生しているが、減少傾向にある。脱走理由は「服務に嫌気が差した」が1877人(72.2%)で最も多く、「家庭問題」が115人(6.1%)、「異性問題」が74人(3.9%)と続いている。
今回の事件が示唆する軍制度改革の必要性
今回のA上等兵の脱走事件は、韓国軍の迅速な対応能力を示すと同時に、根本的な軍制度改革の必要性を浮き彫りにしている。武器を遺棄して逃走したことは、兵士が暴力的な手段に訴えることなく問題解決を図ろうとした可能性を示唆している。2022年のD.P.部隊廃止は脱走兵数の減少を反映したものだが、今回のような事件は依然として発生しており、軍の心理的サポート体制や兵士の適応支援システムの強化が急務である。軍は脱走動機と経緯について軍事警察等の関係機関と共に綿密な調査を進行しており、今後は再発防止に向けた具体的な対策が求められる。韓国社会全体としても、義務的な軍服務における人権保護と軍規律維持のバランスを取る新たなアプローチが必要な時期に来ている。特に、Netflixドラマ「D.P.」が提起した軍隊内暴力問題への社会的関心を契機として、より人道的で効果的な軍制度の構築に向けた議論が活発化することが期待される。
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